ドジャースの大谷翔平(30)は、来季からいよいよ二刀流を解禁する予定だが、ドジャースの投手コーチであるマーク・プライアー氏(44)が19日(日本時間20日)に「投手復帰は遅れるかもしれない」との重大発言を行った。ポッドキャスト番組「ドジャーステリトリー」に出演して発言したもので、オフに行った左肩の亜脱臼の修復手術の影響があると踏んでの見通しだ。また大谷の負担を減らし、二刀流として最大限の力を発揮してもらうために6人ローテーションの本格導入を検討していることも明らかにした。
やはり大谷の二刀流解禁は遅れるのか。
ドジャースのプライアー投手コーチが、地元のポッドキャスト番組「ドジャーステリトリー」に出演して重大発言を行った。
昨年9月にキャリア2度目となる右肘の手術を行った大谷は、順調にリハビリを進め、いよいよ来年から投手として復帰する予定。プライアー投手コーチは「我々全員が興奮している」と期待を口にした上で、こう続けた。
「今年彼がやり遂げたとても驚くべきものを目にしたが、最後に負傷をしたことは確かに理想的なものではなかった。彼の復帰は、少し遅れるかもしれない。(左肩の)リハビリがどのようになるか。それが今後、投球を積み重ねていく彼の復帰プログラムにどのように影響をもたらすかを見てみよう」
投手としての復帰が、本来予定されていた開幕より遅れる可能性を示唆した。
大谷はヤンキースとのワールドシリーズの第2戦で盗塁を試みた際に左肩を亜脱臼する怪我を負った。痛み止めを打ち、テーピングで固めて、第3戦以降も強行出場を続けたが、その際に関節唇を断裂しており、11月5日に内視鏡による修復手術がチームドクターのニール・エラトロッシュ博士の手によって行われた。
球団は「スプリングトレーニングには間に合う」との見込みを明かしたが、左肩のリハビリと、右肘のリハビリを並行して行わねばならないため、投手復帰へ与える影響が危惧されていた。 プライアー投手コーチは、カブスでの現役時代にエースとして18勝6敗、防御率2.43の成績を収めたことがあるが、右肘を痛め25歳で引退を余儀なくされた。そういう過去があるだけに投手のコンディション調整に対しては非常に慎重だ。
今季は同じくトミー・ジョン手術明けのウォーカー・ビューラーの復帰登板を5月6日まで遅らせた。
ドジャースの来季開幕戦は3月18、19日に東京ドームで行われるカブス戦。ファンは、そこでの大谷の投手復帰と、カブスの今永昇太との投げ合いや鈴木誠也との対決を楽しみにしている。どちらかの試合で「1番・投手」とコールされることが最高の復帰ストーリーだが、東京ドームでは、打者に専念し、投手としての復帰マウンドは、後ろにずれ込む可能性が濃厚になってきた。
だが、同投手コーチは、復帰の時期は予定より遅れるかもしれないが、大谷の投手復帰そのものへの不安は持っていない。
「この選手はただスペシャルだ。それ以外にない。今季は、トミー・ジョン手術からのリハビリをやりながら試合に出場し、打撃、走塁で、彼がやり遂げたことは信じられないほど素晴らしいものだった。次の日には、マウンドに戻るための投球プログラムでやるべきことをすべてこなしている。その切り替えが素晴らしい」
メジャー史を塗り替える「54―59」の偉業を達成した裏で、投手への復帰プログラムを丁寧に根気強く続ける、その姿を間近で見てきた。大谷は9月にはブルペンで150キロを超えるボールを投げるまでに回復し、ポストシーズンでの緊急リリーフ登板説が乱れ飛ぶほどだった。
「自分のリハビリに集中して、試合に出て野球界のトップ3とまではいかなくても、最高のレベルで毎日、他のことをやりながらプレーをし続ける。それは、彼のメンタル、感情、知性、そしてどれだけ強靭なのかを物語っている。しかも、そのすべてをこなしていく中でとても物静かで瞬間を楽しんでいる。一日を楽しみ、投球プログラムを楽しみ、ケージでの打撃、ダグアウトにいることを楽しんでいて、それが重荷やストレスになっているようには見えない。彼はチームの一部となり素晴らしいチームメートとのプレーを楽しんでいる」
プライアー投手コーチはそう称えた。
もしかしたら「スペシャル」な大谷のことだから、左肩、右肘のWリハビリも順調に進み、東京ドームでの開幕戦に二刀流解禁が間に合っても不思議ではない。
そしてプライアー投手コーチは、大谷のローテー復帰に備えて、中5日、中6日の登板間隔を与えることができる6人ローテー制の本格導入を検討していることを明かした。
「6人のローテーションは良いかもしれない。今シーズンは山本由伸が日本で投げていた馴染みのある形になるように一部でそうした。それが我々の優先事項といえるものだった。彼を週に1度、もしくは少なくとも5日間休ませて、6日目で投げる形にしようとした」
今季も何度か先発を6人で回したが、それはメジャー1年目で、中4日に慣れていない山本由伸の負担を考慮してのものだった。さらにジェームズ・パクストン(7月にレッドソックスへトレード)、タイラー・グラスノーも休養が必要な投手だったという。
「簡単ではなかったが我々で準備していたものだった。ある選手を休ませる、時々7日、8日の休みを与える、あるいは先発を飛ばすなどの細かな違いがあるが、私は(6人ローテーは)実行可能だと思う。もしやるとすれば、ショウヘイの投手としての負担が重くならず我々に有益となるかもしれない」
大谷の投手復帰にとってもプラスになると断言した。
プライアー投手コーチは、ひとことも触れなかったが、ポスティングが申請されればドジャースが獲得に乗り出すとされている千葉ロッテの佐々木朗希の争奪戦においても、6人ローテーが採用されるなら大きなアドバンテージとなるだろう。
ただ6人ローテーを本格導入するためにはクリアせねばならない問題がある。
「最大の問題はそれをやるだけの十分な選手層があるかだ。もし1人が故障すると、次々と影響が出てきて、他の全員が突然1カ月、2カ月とやってこなかった通常の間隔(中4日)で登板をしなければならなくなる。3Aにメジャーで投げる準備が整っている投手がいるのかどうか。フロントと共に計画をしっかりと立てる必要がある。また15連戦、18連戦がある場合も6人ローテーでずっとやるのか。谷間のスポットに選手を入れていくだけなのか。そしてもしやるとすれば、ブルペンでイニングを稼ぐ救援投手が1人減ることになるので層を厚くしなければならない。良い点、悪い点と多くの要素がある。(野球界は)そうした傾向に向かっているようだが、投手のロースター人数を減らすような動きがあれば、これが続いていくものなのかどうかの確信をまだ持てない」 “世界一”ドジャースの連覇を狙うための投手戦略にも注目が集まる。